アレックス・ハッチンソン『良いトレーニング、無駄なトレーニング』

トレーニング方法ではなくて、トレーニング理論に関する本。現在科学的に分かっていることと、まだよく分かっていないことをはっきり区別して書かれているので非常に読みやすい。特に根拠がないのに断言する過大広告とは全然別のものだ。 中身は一問一答形式…

Ultimate Skiing

大澤真幸『の読書術』

「本をたくさん読む必要はない。しかし深く読む必要はある。」(まえがきより) 読書はただいたずらに量を消費すればよいわけではなく、本を深く読むことで世界への「問い」を発見することこそが重要だ。優れた書物は「問い」を与えてくれる。ここでいう「問い…

インドアボルダリング練習帖

クライミング関係の本はあまり持っていないので買ってみた。一応パフォーマンスロッククライミングの英語版は持っているが… ムーブの解説は必要最低限といった感じ。ウエストロックで撮影されているので何かうれしい。ムーブよりもストレッチとかボディケア…

漢字の楽しみ方 悪字の数々を弁護する

雑懶迷隠傷坐忘愚泥闇落凡閑裏閉枯狼果捨老崩鈍埋混駄遊吝素蛮無柔 これらの漢字は、経済発展を至上とする社会において、嫌なイメージを押し付けられた「悪字」たちである。しかし、漢字の意味は一つではない。これらの漢字のいい面をみて弁護する、というの…

丹沢ネットワーク編『ウォーターウォーキング』

ウォーターウォーキングの定義はよく分からないけれど、とりあえず難しい滝は高巻いて沢歩きを愉しもうという感じか。 初心者を連れて行ったり、一人で行ったりするにはちょうどよさそうだ。アプローチに車を使うルートが多いのが難点か。面白そうなルートは…

アラン・コルバン編『キリスト教の歴史 現代をよりよく理解するために』

試験勉強用に借りたが、なかなか面白かった。 本自体は分厚いけど、一つ一つの論文は短くコンパクトにまとまっているので読みやすい。自分が気になるところだけ拾い読みするといいかも。 初めて日本に滞在したとき、多くのフランス人旅行者と同じように、わ…

坂本眞一『イノサン』

この世に夢はない 絶望とともに生きろ 漫画版『孤高の人』を書いた坂本さんの新作。 『孤高の人』の後半もそうだったけど、擬音がまったくでてこない。それなのに音が聞こえてくるのがすごい。漫画という表現様式の一つの極致だと思う。 『孤高の人』16巻に…

上野榮子訳『源氏物語』

図書館で返却棚に積まれているのをみて、借りてみた。 訳は色々あるけど、どれがいいのかはよく分からない。これは、解説とかは全然ないけど、読みやすいと思う。ところどころよく分からない部分もあるが。 1巻から噂に違わぬロリコンぶりを発揮してくれた。…

古本屋「高原書店」

町田にある古本屋、高原書店へ行ってきた。 インターネットでの販売も行なっている模様。 まほろ横丁という通りを五分ほど歩いたところにビルがある。ここの通りはなかなか面白そうな店が多かった。 中に入ると、通路や階段にまで所狭しと古本が並んでいる。…

町田俊之編『巨匠が描いた聖書』

「芸術と宗教の関係も」とゲーテはいった、「人間の関心をかきたてる他のすべての高尚なものとの関係とまったく同じさ。宗教は単なる素材と考えればいいので、人生の他のすべての素材と同等の権利を持っているにすぎない。信仰の有無も、決して芸術作品の理…

オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』

たのしくすごせ、ただひとときの命を。 一片の土塊もケイコバードやジャムだよ。 世の現象も、人の命も、けっきょく つかのまの夢よ、錯覚よ、幻よ! 11世紀のペルシアにこんな詩人がいたなんて。浮世の虚しさを知りながら、ただひたすら酒を呑めと呼びかけ…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス『ボルヘス・オラル』

晩年のボルヘスがベルグラーノ大学で行なった講演録。扱われたテーマは『書物』『不死性』『エマヌエル・スウェデンボルグ』『探偵小説』『時間』の五つ。邦題は、これがボルヘスの「書いた」ものではなくて、ボルヘスの口から「語られた(オーラルな)」も…

武部利男訳『白楽天詩集』

詩の翻訳は難しい。特にその詩が韻文の厳密な形式によって書かれている場合はなおさらだ。意味だけ訳せればそれでよし、というわけにもいかないだろう。 散文と韻文についての講義で、プリントが配られた。そこに並んでいるのは漢詩とひらがなの文字ばかり。…

藤本勇一『ヒューマニティーズ 外国語学』

学校での言語学習の目的は、言語行為の領域のごく一部を柵で囲い、就職に役立つような、あるいはパーティで社会的信頼を得られるような、文化的エリート人間を養成することにある。確かに、こういったものを習得するのは素晴らしいことだが、言語に内在する…

ウィリアム・モリス『理想の書物』

最も重要な芸術を問われたなら「美しい家」と答えよう、その次に重要なのは「美しい書物」と答えよう。 モリスは、機械によって大量生産される安っぽい本を軽視し、中世の職人たちの高い技術によって生み出された本を評価していた。活字・挿絵・構図・印刷・…

ブルース・チャトウィン『どうして僕はこんなところに』

原題は『What am I doing here』 「What am I doing here」この言葉を聴いても何も感じない人は、読んでも退屈だろう。生涯放浪を続けたチャトウィンの有名な人、無名な人との出会い。誰もが個性的で面白い人たちばかりだ。一番印象に残ったのはマルローとの…

テラフォーマーズ 五巻 感想

テラフォ5巻の発売日。収録話は31話〜41話。イザベラワンパンから加奈子のランキング判明辺りまで。 ・表紙はアドルフ。カバー裏の絵がすごくいい。アドルフはずっとこれを持っていたのか… ・ドイツ班はこれで終わりなんだろうか。結局難易度の高いベースは…

トム・ルッツ『働かない 「怠けもの」と呼ばれた人たち』

タイトルに人目惚れ。 毎日ソファーに寝そべって何もしない息子を見て、著者は腹をたてる。しかし、この怒りはどこからくるのだろうか。その疑問を解決するべく、勤労主義と怠け者主義(スラッカー)の歴史を紐解いていく。 勤労主義者とスラッカーは両極端…

聖遺物崇敬の心性史

イエス・キリスト、聖母マリア、四福音書記者、十二使途、洗礼者ヨハネ、旧約聖書の預言者・イスラエル王・族長、新訳聖書の東方の三博士、そして数多くの殉教者たち。 これらの人々は聖人と呼ばれ、彼らの遺体や彼らが触れたもの、縁のあるものは聖遺物と呼…

北国シロクマノート

ゼミでノートを一冊用意しろと言われたので、いろいろ調べてみた。ノートにもたくさん種類があって、奥が深い。 長く使うものなので、どうせならいいやつを買おうと思ったが、あまり高すぎるのは(モレスキンとか)「自由に書くこと」を阻害しそうだった。青…

『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』

よろしいですか、どう考えてもおかしいのは資本主義体制下の金融システムではないでしょうか。人間が生きていくことのすべて、つまり個人の価値観から世界像まで、経済活動と結びつかないものはありません。問題の根源はお金にあるのです。 お金は身近にあっ…

角幡唯介『探検家、36歳の憂鬱』

今は辺境を見ようと思えば、大金を払ってツアーに参加すれば簡単に行くことができる。国家的威信をかけて探検をしていた時代と違って、冒険に成功したところで社会的地位や名声が得られるわけではない。そんな時代に探検家として生きるのはいったいなぜなの…

平塚晶人『2万5000分の1 地図の読み方』

登山をする人なら誰しも、2万5000分の1の地形図を持ち歩いているはずだ。しかし地形図は記号の塊で、読み方を知らなければ持っていても意味がない。地図は見るものではなく読むものだ。 昔先輩に少しだけ習ったが、そのときはいまいち理解できず、そのまま放…

若林幹夫『地図の想像力』

「日本」という単語を考えるときに、無意識のうちに日本地図を思い浮かべる人は多いはずだ。しかし地図のように俯瞰するかたちで、実際に「日本」を見たことがある人は少ないだろう。それは頭の中で想像するしかない。その想像力は、地図によって規定されて…

W・シヴェルブシュ『図書館炎上 二つの世界大戦とルーヴァン大学図書館』

これを見れば、図書館の破壊がどんな条件のもとで、野蛮のシンボルと化すかが分かる。敵が松明を投げ込んだときだけ、炎は文化にたいする犯罪なのだ。味方の側に罪があるときは、遺憾ながら不運な出来事とされる。 第一次世界大戦でドイツ軍の攻撃によって炎…

『ぽつん』(ナショジオワンダーフォトブック)

大自然を背景に、一匹でたたずむ動物たちの写真集。 自然のなかで一人でいることは、孤独よりもむしろ力強さを感じさせる。そして彼らは自分の肉体以外の余計なものを何一つもっていない。そのシンプルさが美しい。 ナショジオは雑誌を読んでいるけど、内容…

W・シヴェルブシュ『闇をひらく光 19世紀における照明の歴史』

シヴェルブシュ祭りその三 照明は松明やろうそくの炎からガス灯へ、そして電気による白熱灯へと変化していった。電気の光は自然の光に較べて画一的で、管理的である。人工照明の発展を促したのは、やはり産業の要請であった。 日中の自然の光に左右されない…

W・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史 十九世紀における空間と時間の工業化』

十九世紀における蒸気機関の技術上の発達を見れば、近代の生産方法が有機的自然の枠から解放されていく過程を追うことができる。 シヴェルブシュ祭りその二 蒸気機関による鉄道の登場は、人々の空間と時間の感覚にどのような影響を及ぼしたか。それまでの移…

相馬保夫『ドイツの労働者住宅』

十九世紀の工業化の時代、農村から職を求めてたくさんの人たちが都市や工業地帯に移り住むようになった。そこで発生した社会問題をどのように解決するのか、そして民衆の暮らしはどのように営まれたのか。ドイツの労働者住宅を手がかりに、その歴史的変遷を…