オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』

 たのしくすごせ、ただひとときの命を。
 一片の土塊もケイコバードやジャムだよ。
 世の現象も、人の命も、けっきょく
 つかのまの夢よ、錯覚よ、幻よ!


 11世紀のペルシアにこんな詩人がいたなんて。浮世の虚しさを知りながら、ただひたすら酒を呑めと呼びかけてくる。イスラム教国にありながら、見事なまでの唯物主義。


 酒のもう、天日はわれらを滅ぼす、
 君やわれの魂うばう。
 草の上に座って耀う酒をのもう、
 どうせ土になったらあまたの草が生える


 この本には143篇の詩が載っているが、そのうち100篇くらいには酒という単語がある気がする。
 


 地の青馬に跨っている酔漢をみたか?
 邪宗も、イスラムも、まして信仰や戒律どころか、
 神も、真理も、世の中も眼中にないありさま、
 二つの世にかけてこれ以上の勇者があったか?



 どこの国にも同じようなことを考える人はいるものだ。


 験なき ものを思はずは 一杯の
   濁れる酒を 飲むべくあるらし(大伴旅人・酒を讃むる歌)