大澤真幸『の読書術』
「本をたくさん読む必要はない。しかし深く読む必要はある。」(まえがきより)
読書はただいたずらに量を消費すればよいわけではなく、本を深く読むことで世界への「問い」を発見することこそが重要だ。優れた書物は「問い」を与えてくれる。ここでいう「問い」とはどのようなものであるか。本書の中で引用されている内田隆三の言葉がそれをよく示している。
「重要な問いはただ『答えを得る』ためというより、その問題をめぐって
自分の思考を極限まで深めるためにあるというべきだろう。」
大学での勉強はいかに「問い」をたてるか、ということにかかっているのではないだろうか。本書は優れた問いを与えてくれるような書物を取り上げ、書評を行っている。どの書評も興味深くて、その本を読みたくなってくる。これだけ多くのジャンルで優れた書評を書けるということは、著者が単なる書評家ではなく優れた思想家であるということだろう。
この中で特に読みたくなったのは、
・「死者」と「敗者」をいかに救済するか
良知力『向こう岸からの世界史 一つの四十八年革命史論』
・「半沢直樹」はなぜカッコいいのか
池井戸潤『オレたちバブル入行組』
・「地元思考」とは何か
阿部真大『地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会』
・人が魂を失うときとは
増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
「人が魂を失うときとは」の章はかなり読ませる文章で引き込まれた。久しぶりに読書欲をかきたてるいい本だった。