ブルース・チャトウィン『どうして僕はこんなところに』

 原題は『What am I doing here』

「What am I doing here」この言葉を聴いても何も感じない人は、読んでも退屈だろう。生涯放浪を続けたチャトウィンの有名な人、無名な人との出会い。誰もが個性的で面白い人たちばかりだ。一番印象に残ったのはマルローとの対談かなあ。

 
 チャトウィンの作品で有名なのはやはり『ソングライン(歌の道)』だろう。

 アボリジニの信仰では、各種族のトーテムとなる祖先は、原初の泉の泥から自らを創り出した。彼は一歩進み出て己の名を歌い、それが歌の出だしになった。二歩目で最初の言葉に説明を加え、対句が出来上がった。それから彼は全土を巡る旅に出て、一歩一歩あゆみつつ、歌うことで世界を創造した。岩や断崖、砂丘、ゴムの木なども歌によって生み出した。
 私はこの驚異的な世界観を足がかりとして、絶えずさすらい続けずにいられない人間の性を追及してみたかった。


 絶えずさすらい続けずにいられなかったチャトウィンが、放浪の果てに辿り着いたのはいったいどこだったのだろうか。


 今はゼミで山口昌男氏について勉強しているが、彼もチャトウィンに興味を持っていたと知って驚いた。似たようなところがあるのかもしれない。