ウィリアム・モリス『理想の書物』

 最も重要な芸術を問われたなら「美しい家」と答えよう、その次に重要なのは「美しい書物」と答えよう。

 モリスは、機械によって大量生産される安っぽい本を軽視し、中世の職人たちの高い技術によって生み出された本を評価していた。活字・挿絵・構図・印刷・製本など全ての技術が調和してこそ理想の書物になると考えた。
理想の書物を追求したモリスのエッセイと講演集。



 ページの内側の余白は最小にとり、天の余白はこれより広く、外側はさらに広く、そして地の余白を最大にとらねばならない。

 
 こうすることによって、見開きの2Pがひとつのまとまりであるように見えるからだ。


 理想の書物の印刷のために、モリスはケルムスコットプレスを設立し、印刷を行なった。ケルムスコットプレスはここのHPが詳しい。


 ただ細部にまでこだわった本はどうしても価格が高くなってしまい、庶民には買えないものだった。社会主義者として芸術を庶民にも行き渡るように、と考えていた彼はこのような矛盾にも苦しんだようだ。「理想の書物」はいったい誰のためのものなのか。


 あとこの本で取り上げられているのはアルファベットを用いる横書きのものだけなので、日本語だったらどうなのかなあと思ってみたり。「川」のことなんかは日本語には当てはまらないわけだし。


 モリスの『アイスランドへの旅』もぜひ読んでみたい。