坂本眞一『イノサン』

 この世に夢はない
 絶望とともに生きろ


 漫画版『孤高の人』を書いた坂本さんの新作。
 『孤高の人』の後半もそうだったけど、擬音がまったくでてこない。それなのに音が聞こえてくるのがすごい。漫画という表現様式の一つの極致だと思う。

孤高の人』16巻にこういうコメントがある。

 ある頃から僕は擬音を全く信じなくなった。漫画がコマの芸術というならば絵とテンポだけで読み手の頭の中から真実の音が導き出せるはずだ。


 ストーリーは、フランス革命時期に生き、ルイ16世の首を刎ねたシャルル・アンリ・サンソンをモデルにしたもの。無垢(イノサン)なシャルルは死刑執行人の家に生まれたことを思い悩むが、最終的には跡を継ぐことを決意する。『孤高の人』でもそうだったけど、坂本さんはこういう「悩み」とか「戸惑い」を絵で表現するのがものすごく上手だと思う。


 あと表紙の紙質が、漫画では珍しい気がする。

 これから物語がどう展開するのか、どのような新しい表現を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。