『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』

 よろしいですか、どう考えてもおかしいのは資本主義体制下の金融システムではないでしょうか。人間が生きていくことのすべて、つまり個人の価値観から世界像まで、経済活動と結びつかないものはありません。問題の根源はお金にあるのです。


 お金は身近にあってよく使うものだが、その存在について考えることはあまりない。本来は交換のための道具として使われていたのに、いつの間にかそれに支配されているようにもみえる。(株価の上下で一喜一憂したりとか。)


 お金は道具である以上まともな使い方があるはずだ。使いようによっては便利でもあるし、暴力や支配の道具にもなりうる。英語だって地図だって同じだ。(最近の英語偏重は異常だ)今は支配力としての役割が強すぎる。この本はお金について考え直すいいきっかけをくれる。


 この本では主にゲゼルの思想に基づいて、「減価するお金」や利子の付かないお金」の考えかたを紹介している。そして実際に地域通貨を作って、活気を取り戻したイサカやヴィア銀行を紹介している。地域通貨に関しては失敗することも多いだろうなあ。個人主義に走る人間が多ければ失敗するのは目に見えている。


 このシステムが必然的にもたらすことがはっきり見えるようになる前に、理性と理解により、この資本主義システムが改革されるという幻想を私は抱いていません。つまり、史上よくあるように、理性が人を動かさない場合、出来事がそれを行うことになるのです。人間が引き起こす出来事がそれを行う。その出来事は、私たちの子孫がこの惑星上で暮らしていくことを難しくすると思います。彼らは私たちを呪うことでしょう。そしてそれはもっともなことなのです。私が作家としてこの点でできることは、子孫たちが私たちと同じ過ちをおかさないよう、思考し観念を生み出すことです。


 
 現在も金融問題は解決の糸口がまったくみえていないけど、これからどうなるんだろうか。この出来事をきっかけにして、もっと新しい形の通貨が登場したりするのかもしれない。そうなったら面白い。


 全然関係ないところでもう一つ。エンデは「現代人は『この本は何をいいたいのかという質問』にとらわれている」と嘆いていたらしい。「何の役にたつの」とか「なんで山に登るの」とかいう質問も同じ類のものだろう。こういう無粋な質問をする人って何を考えてるんだろう。