相馬保夫『ドイツの労働者住宅』

 十九世紀の工業化の時代、農村から職を求めてたくさんの人たちが都市や工業地帯に移り住むようになった。そこで発生した社会問題をどのように解決するのか、そして民衆の暮らしはどのように営まれたのか。ドイツの労働者住宅を手がかりに、その歴史的変遷をたどり、住宅とそこに住む人びとの視点から十九〜二十世紀ドイツ社会史の一側面を照らし出す。

 
 産業革命によって工業化が急速にすすんでいた時代、人々はこぞって農村から都会へやってきた。その数が多すぎたために、住宅環境は悪くなる一方であった。そうして労働者住宅は「大衆的貧困」を象徴するようなものになっていく。
 政府や会社にとっては、それをどのように解決して、労働者たちをいかにして「管理」するかが重要な課題になった。集合住宅を作ったりしたが、それが逆に労働者の連帯を生んだりして、社会主義の温床となったこともあるみたいだ。今では労働環境がいいみたいなイメージがあるドイツだけど、やはり産業革命期はどこの国も労働環境は悪いよなあ。そして住宅環境が社会に与える影響は思っていたよりも大きかったようだ。

 産業革命によって、今までの水車とか馬のような自然にのっとった生産は機械による生産にとって代わられた。それを「有機的自然の枠からの解放」と表現するらしい。やはりこの辺りの時代から人間と自然の関係は断絶されていったのだろう。