自転車カナダ横断 Vancouver~Banff編 そのⅠ

7/29 Vancouver〜Porteau Cove 50km

 「Whistlerってところは綺麗だよ」と誰かが言った。

 今回も細かいコースは特に決めておらず、ずっとトランスカナダハイウェイ(大陸横断道路)を走っていけばいいだろう、と漠然と考えていた。この言葉を聞いて少し調べてみたら、確かに面白そうである。
 Banffに行くには二通りの道がある。一つはそのままトランスカナダハイウェイを西に向かうルート。もう一つが少し北側を遠回りして、Whistlerを通っていくルートである。この道はその名を「Sea to Sky Highway」という。名前からしてアップダウンの多そうな道であるし、少し遠回りな道でもある。だが、かの星一徹はこう言った。
 「男なら苦しいときほど遠回りの道を選べ」
と。ならば行こうではないか修羅の道。というわけで、まずはWhistlerを目指すこととなった。



 いとこに見送られて出発。走り始めるとすぐに気分がよくなってくる。一番めんどくさいのが飛行機で運んで走り始めるまでなので、出発してしまえば旅の八割は終わったも同然である。なにせ後は走るだけなのだから。
 
 交通量はそれなりに多いが、路側帯が広いので特に問題はない。しかしこの道路は一応Highwayである。そして、他の道路と交差するときはジャンクション形式になっている。もちろん信号などない。出口の部分、そして合流してくる部分では道路を突っ切らなければならない。自転車のためにスピードを落とす車などいないので、車の流れが途切れるのを待ってから渡る。そのため、ジャンクションごとに止まらなければならず、なかなかめんどくさい。


 少し見辛いが、画面下部中心辺りにあるのがジャンクション。直進するには道路を突っ切らなければならない。


 今日はほとんど海沿いを走るので、アップダウンはさほどないのではと期待していたが、そんなことはなかった。さすがSea to Skyである。

 
 本当は次の街まで走ろうと思っていたが、Porteau Cove Provincial Park(州立公園のこと、以下P.P.)でキャンプをすることにした。
 BC州のキャンプ場はオンラインで予約することができる。どこに泊まるかははっきり決めていなかったので、予約はしていなかったのだが、残りは2サイトしかなかった。ギリギリだ。


 なかなか立地のよいキャンプ場だ。


 あの木々のなかにキャンプサイトがある。


 日が暮れるのは22時(!)なので時間をもてあました。なので初日から洗濯をしてしまった。こんなことは初めてかもしれない。

 
 夜中はなかなか寝付けなかった。明るいなあと思って外にでてみると、満月に近い月だった。オーストラリアで月明かりのせいで目を覚ましたことを思い出す。目が覚めてしまったのでぼけーっと海を眺める。月が明るいせいで星はあまり見えなかった。


 テントに戻ってうとうとしていると、突然「ブオォォォォーーーー」という音をたてて何かが通り過ぎて行った。これが大陸横断鉄道との長い付き合いの始まりであった。
 郊外では踏み切りなどというオシャレなものは存在しない。だが、当然道路と交差している部分はある。そこでどうするかといえば、思いっきり汽笛を鳴らして通っていくのである。もちろん真夜中でもおかまいなしだ。線路はトランスカナダハイウェイと平行して走っていることが多いので、これから先何度もこいつに起こされることとなった。

 うーん、カナダはもっと静かな国かと思っていたけど、そういうわけでもなさそうだ。